MU-MIMOについて徹底解説!MIMOとの違い・効果・注意点は?
「MU-MIMO」という言葉をご存じでしょうか?
Wi-Fiルーターを調べてみると、「MU-MIMO対応」と表記されている機種があります。
MU-MIMOがどういうものかを知らなければ、Wi-Fiルーターを選ぶ際に困惑してしまいますよね。
本記事では、MU-MIMOの基礎知識から関連知識、メリットとデメリットについて徹底解説します。
記事の最後には、MU-MIMOに関する用語をわかりやすく解説するので必見です!
MU-MIMOとは無線LAN通信のアンテナ技術のこと
MU-MIMOとは、無線LAN通信のアンテナ技術のことです。
さらにMU-MIMOの仕組みについて、次の順番で解説します。
- MU-MIMOはMIMOをより進化させた技術
- MU-MIMOとMIMOの違い
それでは、一緒にチェックしていきましょう。
MU-MIMOはMIMOをより進化させた技術
MU-MIMOとは「Multi User-Multiple Input Multiple Output」の略称で、「マルチユーザーマイモ」と呼ばれるMIMOを発展させたアンテナ技術です。
そもそものMIMO(マイモ)は、Wi-Fiルーターに内蔵された複数のアンテナを使ったWi-Fi4(IEEE 802.11n)から実装された無線LAN技術を指しています。
ちなみにMIMOは先述したMU-MIMOの後半の略称で、直訳すると多入力/多出力という意味の言葉です。
MIMOは複数のアンテナを使った無線LAN通信の高速化と安定化、複数端末の同時接続を目的とし、その進化系としてWi-Fi5(IEEE 802.11ac)からMU-MIMOが実用化されました。
MU-MIMOには欠かせない「ビームフォーミング」
MU-MIMOとセットで語られることが多いのが、ビームフォーミングという技術です。
ビームフォーミングとは「複数のアンテナから発信される電波の波を合わせる」技術で、簡単に言えばWi-Fiルーターから出力される電波をコントロールすることができます。
MU-MIMOではこのビームフォーミングが欠かせない存在となっていて、Wi-Fi5の登場以降からMU-MIMOとともに一般に普及しました。
MIMOが登場した時期にはまだ実用化されていなかったため、Wi-Fiルーター選びの際にMU-MIMO対応機かどうかの違いを見分ける目安に、ビームフォーミング対応かどうかが基準となります。
MU-MIMOの幅を広げるWi-Fi6
MU-MIMOはWi-Fi5の登場とともに普及しましたが、性能をさらに引き出すならWi-Fi6(IEEE802.11ax)の導入をおすすめします。
MU-MIMOは無線LAN通信の高速・安定化と複数端末の同時通信を可能にする技術ですが、Wi-Fi5までのMU-MIMOには同時接続通信が下りのみにしか適用されないという欠点があったのです。
つまり、ダウンロードの際は複数同時通信が可能でも、アップロードでは接続している端末・デバイスに接続の順番待ちが発生していました。
Wi-Fi6では従来のMU-MIMOが持つ欠点を克服し、上下ともに複数台同時通信が可能です。
Wi-Fi5ではMU-MIMOの4台までだった同時接続通信数は8台まで増え、最大転送(通信)速度の理論値が9.6Gbpsと飛躍的に向上しました。
また、Wi-Fi6からはOFDMAという技術にも対応しています。
Wi-Fi6対応ルーター(11axモード)のデメリット
当然のことながら、デバイスがWi-Fi6に対応していなければスペックを生かすことができません。
例えば、光回線のauひかりで提供されているルーターがNEC製のAterm BL1000HWというWi-Fi6対応機なので、設置の際には対応機種や設定を要確認です。
また、出荷時の状態だとデフォルト設定なので、インターネット接続は可能でも通信速度が制御された状態の可能性があります。
電源を入れれば即機能するMU-MIMOとは違い、AtermシリーズのWi-Fiルーターは11axモードやWi-Fi自動設定動作モードは各自で設定しなくてはなりません。.
Aterm BL1000HWを使っている場合、基本設定から11axモードと自動設定動作モードを接続時に確認することをおすすめします。
MU-MIMOとMIMOの違い
MU-MIMOとMIMOの違いは、複数同時通信ができる台数とビームフォーミングの有無です。
MIMOは複数同時接続はできても、通信は1台ずつ順番での通信しかできません。
それに対し、MU-MIMOはそれぞれが独立した内蔵アンテナで複数の端末との同時通信が可能です。
冒頭で説明したように、MU-MIMOにはビームフォーミングが採用されているので、より電波が届きやすく通信の安定化が図れるのもMIMOとの大きな違いですね。
ちなみに、MIMOやMU-MIMOで表記される〇×〇と表示されている数字は、送受信できる内蔵アンテナの本数を指しています。
最大8本までの内蔵されているアンテナの目安となり、4×4 MIMOという表記であれば スマートフォンやデバイスが4台まで同時接続可能です。
MU-MIMOによる2つのメリット
MU-MIMOのメリットは次の2つです。
- 電波の飛ぶ方向をコントロールして繫がりやすくなる
- 複数の端末を同時接続時に速度低下が起こりにくい
それでは順番に、MU-MIMOのメリットを解説していきましょう。
1.電波の飛ぶ方向をコントロールして繫がりやすくなる
MU-MIMOに搭載されているビームフォーミングは、複数のアンテナから出力された電波同士が干渉しあうことで電波強度を調整する機能です。
親機と子機が繫がることによって電波の情報を分析し、調整を繰り返して最適な状態での通信を可能にしています。
MU-MIMOの代表的な機能は、電波の飛ぶ方向をコントロールして通信をスムーズにする技術です。
2.複数の端末を同時接続時に速度低下が起こりにくい
MU-MIMOは複数のアンテナがそれぞれで送受信を行うので、複数の端末との同時接続・同時通信を可能にしているから速度低下が起こりにくいです。
ビームフォーミングの技術によって電波はコントロールされ、繫がりやすいのは前項で説明した通りですね。
従来のMIMOでは複数台での同時接続は可能でも、同時通信は1台ずつという欠点がありました。
MU-MIMOでは最大8台までの同時通信が可能なため、同時接続数が8台以内であれば安定した通信速度での複数端末による同時パケット通信が可能です。
MU-MIMOによる2つのデメリット
MU-MIMOのデメリットは次の2つです。
- MU-MIMO対応ルーターは高額になりやすい
- ルーターとデバイスがどちらもMU-MIMO対応であること
それでは、MU-MIMOのデメリットについて解説していきましょう。
1.MU-MIMO対応ルーターは高額になりやすい
MU-MIMO対応ルーターは、一般的な無線LANルーターに比べて高額なものが多いです。
価格帯の一例を価格.comの製品一覧で確認してみましょう。
MU-MIMO対応ルーターの価格一例
製品名 | 価格 |
---|---|
ASUS RT-AX89X | 55,688円(税込) |
バッファロー WXR-6000AX12B | 35,976円(税込) |
TP-LINK Archer AX11000 | 35,882円(税込) |
NEC Aterm AX6000HP AM-AX6000HP | 30,283円(税込) |
IODATA WN-DAX1800GR | 7,398円(税込) |
大手メーカー製品をピックアップしたものが上記の表です。
MU-MIMO対応かつ、Wi-Fi6(IEEE 802.11ax)対応ルーターとなると値段が張るのでデメリットに輪をかけています。
約2年前に販売されたIODATA製は破格と言える価格ですが、最新機種ともなると高額と言わざるを得ないでしょう。
Wi-Fi6非対応のものや発売時期が古いものであれば手ごろな価格で手に入りますが、通信速度は言うまでもなく、在庫自体が常にあるとは限りません。
通信速度にこだわるのであれば、予算を多めに見積もる必要があります。
2.ルーターとデバイスがどちらもMU-MIMO対応でなくてはならない
MU-MIMO機能はルーターとデバイスの両方が対応している必要があり、どちらか一方が非対応だと機能を使うことができません。
スマートフォンにもMU-MIMO(Wi-Fi6)対応かそうでないものがあるので、主なメーカーの対応機種を以下の表で確認しておきましょう。
主なスマートフォンのMU-MIMO(Wi-Fi6)対応状況
iPhone | iPhone13シリーズiPhone12シリーズiPhone11シリーズ |
AQUOS | R7R6sense6ssense6sense5Gwishwish2zero6 |
Galaxy | A53 5GS22 UltraS22S22+S21+S21+ 5GS21 5GS21 Ultra 5GZ Flip3 5GZ Fold3 5G |
Xperia | 1 IVPRO-IPRO5 III5 II1 III1 II |
HUAWEI | P40 Pro 5G |
OPPO | Find X3 ProFind X2 Pro |
Apple公式のiPhoneのWi-Fi仕様の詳細によると、iPhone11以降はMU-MIMOに対応しています。
公式サイトではiPhone Xまでの対応表のみなので、iPhone8やiPhone SEシリーズなどは非対応と考えて良いでしょう。
基本的に2021年以降の最新機種はMU-MIMOに対応しているものも多いですが、廉価版やシンプルスマホなどの機能を簡略化させた端末には非対応のものがあるので注意が必要です。
AQUOSやGalaxyは5G対応スマートフォンにMU-MIMO非対応のものが見られ、逆にXperiaは対応している最新機種が他社と比べると少ない印象を受けます。
HUAWEIは2020年以降にMU-MIMO対応スマートフォンが発売されておらず、OPPOともども低価格スマートフォンの対応状況は良いと言えません。
まとめ
MU-MIMOとはどういうものか、仕組みと機能の効果、従来のMIMOとの違いや注意点について解説してきました。
高速化や利便性の向上とともに、Wi-Fi技術の複雑化によって使い方次第では性能をフルに発揮できないというケースも少なくありません。
MU-MIMO対応機種にはさまざまな機能が搭載され、だんだんと知識が追いつかなくなってくることも考えられます。
本サイトではWi-Fiの情報や関連知識を幅広く公開しているので、なにか調べたいことがあればぜひご利用ください。
あなたのライフスタイルがより充実したものになることを、心から願っています。
MU-MIMOにまつわる関連用語の解説
MU-MIMOにまつわる関連用語について解説します。
専門用語が多くて混乱するという方は、あわせてチェックしておいてください。
SU-MIMOの意味とMU-MIMOとの違いは?
- SU-MIMOの意味とMU-MIMOとの違いは?
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SU-MIMOとは「Single User-Single User-MIMO」の略で、ひとつの端末・デバイスに対して1対1での通信方法を指します。
MIMOとSU-MIMOは同じ意味で使われるので、表現以外の違いは特にありません。
チャネルボンディングの意味とMIMOとの違いは?
- チャネルボンディングの意味とMIMOとの違いは?
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チャネルボンディングとは、複数の通信チャネルをひとつにまとめることで束ねたチャネルが乗算されて通信速度を向上させる技術のことです。
通信経路(通信チャネル)を増やす、複数使うことで帯域幅が増えてデータが送信しやすくなります。
渋滞が起きないように、一本の大きなトンネルに複数の入り口を作っているようなイメージで構いません。
わかりやすく言えば、MU-MIMOのアンテナを通信チャネルに置き換えたものがチャネルボンディングです。
OFDMAの意味とMU-MIMOとの違いは?
- OFDMAの意味とMU-MIMOとの違いは?
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OFDMAとは「Orthogonal Frequency Division Multiple Access」の略で、ひとつの電波を複数のユーザー同士で共有する技術のことです。
通信時にすべての周波数を端末に割り当てていた従来から、OFDMAの登場によって周波数を分割して割り当てることができるようになり、待ち時間なくスムーズな通信が可能になりました。
複数に効率よく伝送するOFDMAは「多元接続方式」とも呼ばれ、時分割方式で個別に通信する方法をOFDMと呼びます。
アップリンクとダウンリンクの意味は?
- アップリンクとダウンリンクの意味は?
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端末と基地局を往来する電波の方向を指し、通信速度で言うところの「上り」と「下り」の伝送経路を意味します。
直訳すると上り接続と下り接続となり、端末から基地局へはアップリンク(送信)、その逆はダウンリンク(受信)です。
スループットの意味は?
- スループットの意味は?
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処理能力やデータ転送量のことを意味し、わかりやすく言えば通信速度のことです。
ストリーム数とはなにを指している数字?
- ストリーム数とはなにを指している数字?
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単純にアンテナの本数を指し、4×4なら送信用と受信用が4本ずつという意味です。
本数が多いほど最大通信速度や安定性が向上します。